Vol.2 ターゲットと部門の絞り込み、という戦略

こんにちは。“商品・サービス刷新コンサルタント”のモトです。

 

私はここ5年ほど毎月、山手線沿線にある企業さんを訪問するのですが、その時に、近道である食品スーパー「Tストア」の中を通ります。

 

その「Tストア」が3月に「新改装オープン」をしたのですが、先週もこちらを訪れて改めて「すごい改装だなぁ」と思ったので、皆さんにご紹介しましょう。

 

「すごい」というのは、「商品構成のリニュアル度の大胆さ」。大きな経営判断を伴う、でもおそらく効果の出ている、挑戦的なリニュアルなのです。

 

その商品構成リニュアルは、どんな視点で展開されているか?そこから私たちはどんなことを学べるのか? 今日は、「食品スーパーから学ぶ、商品構成リニュアルの切り口」についてお話ししていきます。

本日のポイント

◎TPOS(顧客の用途・目的)を絞り込む

◎絞り込んだ顧客を満足させるため品種を3~7種用意する

「食品スーパー」の基本は「家庭料理の食材提供」

ちょっとここで、「食品スーパー」の商品構成について知っておきましょう。食品スーパーの基本は「家庭料理用の食材提供」です。ですので、今日の夕食、明日の朝食、子どもの(そして自分の)おやつ、週末の「パーティ」のために何か買いたい主婦(主夫)たちの目的を満たすための揃えになっています。「部門構成」として表現すると、こんな感じですね。

皆さんが行くスーパーもこのような構成のはずです。

「ほぼ惣菜」になってしまった

一方、今回のT社。商品構成がどうなったかというと...こうなりました。

お分かりでしょうか? 肉も魚も果物も野菜も、惣菜以外の部門をほぼ廃止。空いたスペースに惣菜を並べています。一言でいうと、惣菜特化型店舗ですね。野菜・果物・精肉・鮮魚は惣菜・サラダ・デザートとしてのパッケージで置かれています。

 

逆に、惣菜種類は驚くほど増えています。

皆さんが、Tストア近隣にに住む(または勤務する)ビジネスパーソンだとしましょう。夜、一日の仕事を終えて疲れ果て、お腹を空かせて、この店に立ち寄ります。

 

店内で皆さんの目に入るのは、一般的な「パック詰めされたおかず」各種、山のように陳列のお弁当(よく見ると各種駅弁もあり)。他にも色とりどりのサンドイッチ各種、焼き立ての良い香りがするパン各種、サラダバイキング、揚げ物バイキング、焼き鳥バイキング、寿司各種... 

いやー、今日はどれにしよう、迷ってしまう、、、という「迷う楽しさ」を感じるほどに楽しい買い物ができるわけです。コンビニの3倍ぐらいの売場面積がほぼ惣菜なので、選び放題なわけです。

 

小売店舗というのは、限られた売り場面積の中で、どれだけ顧客ニーズに応えるものを並べてお客様に買っていただくか、というのが勝負のしどころです。

  

このケースでは、商品構成の変更によって、客数の増加(客層の拡大と利用頻度の向上)、商品回転率の増加、結果として売上の増加は間違いないでしょう。惣菜をうまく内製化していれば、粗利率の向上も実現できているはずです。

ビジネスの着眼点として素晴らしいところ

このリニュアルの何がすごいのか? 私たちがビジネスを発展させるうえで学ぶべきところはどこなのでしょうか?

 

この思い切ったリニュアルのポイントは、商品構成の前提条件、つまり、

 

「誰に何を提供するか」という根幹を変えている、

 

という点にあります。

 

従来、惣菜を求めていたのは、多くの独身男性と、限られた数の主婦(女性)でした。しかし、最近は働く女性の増加で多くの主婦にとって調理にかける時間やエネルギーが大幅に減り、惣菜のニーズが高まっています。また、高齢者の世帯も、体力・気力の低下や世帯人員(家族の人数)の減少で、わざわざ料理を作るのは面倒だわ、という方が増えているのです。

 

今回のリニュアルは、まず、より魅力的な市場(惣菜市場ヘの高いニーズ)を捉えた上での「客層絞り込み」があり、それに連動して商品構成の変更ができているわけです。

ターゲット変更+部門縮小で成功した事例

今回ご紹介したような「ターゲット変更→部門縮小→特定部門の品種拡大」というのは、実は、どの業種業態にもありうる、自然の流れです。ある種類のビジネスは、時間を経て競合が増えるにつれて、生き残りのために自然に特殊化・専門化していきます。

 

例えば、福岡市の中心地、天神には「J(仮名)」というお店があります。こちら、もともとは文房具店なのですが、20年ほど前に「手紙用品専門店」として分化し、今も生き残っているお店です。ここは「手紙用品専門」なのですが、狙いとする層は「大切な人に手紙を書くことを楽しみたい」という層です。

 

よって、このニーズに応える品揃えは、便箋、封筒各種、カード各種、色紙各種、筆記具各種、スタンプ各種、シール各種、、、、となっています。

 

和菓子店の場合、一般的な部門構成は、大福等の「生菓子部門」、どら焼き等の「半生菓子部門」、箱詰めの「贈答品部門」です。この業界で、近年成長しているビジネスモデルは、「贈答品に特化して生菓子を置かない店舗」です。和菓子の従来の客層から「和菓子の贈答品を求める人」に狙いを絞り込んだ結果、生菓子部門や半生菓子を廃止してるのですね。

 

エステティック業界でも、痩せるための施術を提供する「痩身部門」で、美脚専門、お腹専門、という特化が進んでいます。

 

ですので、皆さんの事業を今後大きく伸ばすうえでは、「ターゲットと部門を絞る」ことは一つの大きなヒントになります。でも、その時に2つ注意点があります。

「ターゲット・部門を絞りこむ」場合の注意点

ひとつは、収益構造自体の変更を考える、ということ。よくあるのは、固定(人件費や家賃など)は変わらないのに、客層を絞り込んだ分だけ、客数が減ってしまい、売上減・赤字になってしまうこと。

 

例えば、文房具店が客層を「手紙関連需要」に絞り込むことも、和菓子屋さんが客層を「贈答品需要」に絞り込むことも、10人に1人だった潜在客数を、100人に1人、1000人に減らすリスクがあるわけですから。

 

2つめは、特別な目的を持った顧客に対して、相手の予算に合わせて、十分な数の品種・品目を提供すること。客層の絞り込みと部門の絞り込みは、つまり総合店から専門店になることを意味します。手紙を書くために便箋がほしい、今日の夜は何か揚げ物を食べたい気分、何が何でも足を細くしたい、という、自社が絞り込んだ客層の目的に対して、少なくとも3つ~7つの選択肢を提供しましょう。そこに「選ぶ楽しさ」「選ぶ満足感」が生まれ、お客様の満足度が高くなるのです。

 


 あなたのビジネスはもっと成長します。「ターゲット・部門を絞る」ことは、多くの策のひとつにすぎません。まずは顧客目線で商品構成・サービス構成を見直すところから、改革を始めましょう。


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