Vol.12 新規事業の「第一関門」をどう乗り越えるか

ある企業の挑戦

 

 先日から、あるサービス業の社長と一緒にメニューと価格体系の作り直しをしています。

 

この道20年を超える経験豊富な社長。スタッフ達も優秀。皆さんの誠実な仕事ぶりによって、クライアントからの信頼も厚く、売上・利益・成長率ともに十分な数字。今後5年は安泰に見えるような企業です。

 

 メニューの作り直し、と聞くと、簡単そうに聞こえますよね。あたかも「メニュー表」という印刷物を作り直す、かのような。

 

 しかし実際には、これまで使ってきた業界慣習通りの価格体系を、今回、全く新しい価格体系にしようとしています。売上の構造が全く変わってしまうような大きなチャレンジです。ビジネスの環境が変わってお客様の価値観が変わってきている中で、社長としては、お客様の納得度を高めるための模索をしているのです。

 

しかし、右腕的な存在のスタッフは「わざわざそんなことやらなくてもいいんじゃないですか?」と懸念表明。社長の取り組みに納得がいかない、という状況です。

なぜスタッフが反対するのか

この会社の場合、このチャレンジによって2割程度の得意先の支払い額が現状よりも多くなってしまいます。なので、お客様が当社から他社に離脱してしまう可能性が高くなる、一時的に売上が下がる、というリスクがあります。(社長としては、それでも長期的に安定的に客数を増加させたい、という考え。)

 

右腕的な存在のスタッフの言い分は、「いまお金を払ってくれているクライアントが離脱するようなことを、わざわざやる必要ないんじゃないですか」との意向。

 

スタッフは一般に短期的な判断をします。(経営者ではなないですから当然ですね。)一時的であれ、売上が減ったり、赤字になったりすることに不安を感じます。

 

また、多くのスタッフは感情的・直観的な判断をします。(人間ですから、これも当然ですね。)感情的な判断は、基本的に「現状維持」を好みます。そして「変革」「面倒」を嫌います。

 

今回のケースであれば、これまでせっかく築いたお客様との関係を破談にしてしまうことへの不快さが大きいでしょう。新しいことを煩わしく思うのも、人間として自然な感情です。

 

さて、あなただったらこの反対する社員をどう説得するでしょうか?

経営者にしかできない役割

新規事業を成功させたいなら(あるいは失敗を最小限にとどめたいなら)、戦略的に重要なことがいくつかあります。

 ・勝てる見込みがある市場と商品構成(サービスメニュー)を選ぶこと

 ・事前に十分な数字のシミュレーションをすること、

 ・目標値とチャレンジの期間を決めること

 ・投資額を決めること

 ・成果が見えるまでは大きな投資をしないこと、、、等

 

...こういう理論的な判断は、私たちのようなコンサルタントが得意とする分野でもあります。

 

一方で新規事業の概要が決まると、社内の協力を得ていくことが必要になります。社員・スタッフの協力なしでは事業は前に進まないからです。そして、一体となって盛り上がれれば、仕事としてこんなに楽しいものはありません。

 

これまで私は、社内を説得できずに新規事業を見送ったケースをいくつも見てきました。社内の説得に失敗すると、新規事業は一歩も動き出すことができません。 社内の説得が新規事業を始める前の「関門」なのですね。

 

でもここで、乗り気でないスタッフを巻き込んでいくこと、反対するスタッフを説得することは、実はその人たちとの関わりが少ない外部のコンサルタントには、解決が難しい課題です。経営者だからこそできる重要な役割なのです。

重要なのは、会社・社員を守ろうとする必死な思いがあること

冒頭の企業の社長の目線は10年先、20年先にありました。お会いする度に、私には次のようなことをおっしゃっています。

 

「まだ気づいていないお客様も多いが、今の価格体系ではお客様の納得度が低い。自分が顧客だったら、こんな価格では買いたくないと実は思っている。

 

お客様に納得していただけない価格だと、遅かれ早かれインターネットで台頭してきている別の若い企業にクライアントを取られるだろう。そうすると、この会社を維持できなくなる。社員も雇用し続けられない。

 

今、変革をすることで会社がゴタついてしまうことは仕方ない。それよりも、今後10年で大量のお客様が離れていくことを、今のうちに防いでおきたい。」

 

この社長は、そんな危機感と責任感を持って、既存の事業構造を根底から変えてしまうような、変革をしようとしているわけですね。

 

この社長の行動・判断の根底にあるものは何でしょう? -それは、会社・社員を守ろうとする必死の思い、です。

この会社がどうなるか(私の予想)

この会社は、今後どうなっていくでしょう?

 

今はまだ、社内の空気は不穏です。社長は何をしようとしているのだろうと、スタッフたちがいぶかっているのが分かります。

 

でもきっとこの社長は、これから色々な角度から、何度も、必死な思いを真摯に丁寧に、スタッフに対して表明していくことでしょう。そうすれば、乗り気でなかった社員も、みんなで協力してこの変革を成功させようという態度に変わっていくでしょう。そして、試行錯誤しながら、これからも長く事業を発展させていくだろうと思うのです。

 

なぜ?- 誠実な情熱は、必ず人を動かすから。これは、私の経験をもって信じていることです。

あなただったらどうするか?

さて、あなたは、新しい取り組みを始めるときに、周囲から反対されていないでしょうか?

 

その人たちを、あなただったら、どんなふうに説得していきますか?

そこから、会社の新しい未来が始まっていくのです。


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