Vol.13 「それ、うちの会社では無理なんです」の本当の意味とは?

先日、大手食品スーパーA社で経営企画をしている方(Bさん)とお話ししていたら、とても気になる発言が...

え?「肉と野菜と調味料を一緒に販売」はできない!?

話題は、クロスマーチャンダイジング(お客様が必要とするものや便利にするものを、部門を超えて一緒に販売する手法)について。

 

私:

「やはり御社でも、カットした肉と野菜と調味料を一緒に販売するような(=クロスマーチャンダイジング、ミールキット販売)の予定があるんでしょうか?アメリカのスーパーではかなり広がってきているみたいですが。。。」

 

Bさん:

「肉と野菜と調味料を一緒に販売...あ~、それは、うちでは無理なんですよ...(がっかりした様子)

 

きゅうりとディップを一緒に売る、とか、野菜と野菜炒めの素を一緒に売る、とか、絶対お客さんに喜ばれそうですよね?売上も上がりますしね。でも、そういうのは、うちでは絶対無理なんです。

 

やったらいいのは皆が分かっているんですが、組織的にできないんですよ。」

 

とのこと。

なぜ「できない」のか

食品スーパーは取扱商品が多いため、基本的に、青果・精肉・鮮魚・グロッサリーなどの部門で利益を出すように管理されています。(売上・仕入・人件費・利益を部門ごとに管理する)

 

この中で「肉と野菜と調味料を一緒に販売」しようとすると、「精肉部門で仕入れた商品を青果部門の担当者が陳列する」とか「青果部門で本来野菜を置く場所にグロッサリーの商品を置かなければならない」という状況が生まれます。

 

現場の人からみると「なんで、他の部門の商品をウチの売場で並べなきゃいけないんだよっ」となってしまうわけですね。

 

それが、「できない」理由です。でも、これは「表面的な理由」です。

実は、やろうと思えばできる

実は、部門管理を維持しながら「肉と野菜と調味料を一緒に販売する」ことは、技術的にも、組織的にも、可能なことです。商品に関するデータの集め方、判断の仕方、部門間の壁を取り払うような実現方法は確立されています。

 

地方の中堅チェーンスーパーが卸とタッグを組んで「肉と野菜と調味料を一緒に販売する」式のクロスマーチャンダイジングを導入。徹底的にお客様の暮らしに寄り添う売り方をし、その地に進出してきた全国チェーンの大手を2年で閉店に追い込んだという実例もあります。

 

A社は大手企業ですし、そのやり方を知らないわけでもない。また、財務諸表を見ると余力があるようなので、カネがない、人がいない、という理由で「できない」わけではないようです。

「やらないと決めた」可能性?

では、なぜ「うちの組織では無理なんです」になるのか?

 

一つは、経営陣が「(肉と野菜と調味料を一緒に販売する方法を)やらないと決めた」のだと考えられます。裏返すと、「将来のために別のことを強化すると決めた」可能性です。

 

今後10年を見越したときに、別の戦略、つまり、徹底的に安売りする低価格戦略でいく、とか、百貨店商品を扱うような高級路線でいく、とか、エンターテイメント性の高い商品構成をする戦略を取る、とか...

 

 

だとしたら、部門間の壁を取り払って「(肉と野菜と調味料を一緒に販売する」ということが後回しになることは納得できます。

「判断を先延ばしにしている」のでは?

 

もう一つは、経営陣が「(肉と野菜と調味料を一緒に販売する方法を)やるという決断を先延ばしにしている。そして、今のままでもなんとか生きていけるんじゃないかと思っている。」という可能性です。

 

私の予想は、後者です。店舗を見てまわって「特別な成長戦略」が感じられなかったこともあるのですが、そもそも人間は、圧倒的多数が後者のような“先延ばし”的な判断をするので。

 

ダイエットを先延ばしにする、禁煙を先延ばしにする、将来のための勉強を先延ばしにする、医療費改革を先延ばしにする、財政赤字の解決を先延ばしにする、、といった具合に...人間が作る世の中は、「先延ばし」でいっぱいです。

本当に先延ばしにしてよいのか?

食品スーパーの外部環境を見ると、人口減少、高齢化、働く女性の増加、世帯人口減少、競争の激化、コンビニエンス・ストアの台頭、インターネット販売の増加、など等、、、そもそも人口が減っているうえに、その人たちさえも「もはやスーパーに買い物に行く必要性さえなくなってきている」という状況なのです。

 

かつては、「安くて良いものを豊富に品ぞろえする」ことが、お客様の期待に応えることを意味していました。

 

しかし、過去の経営者たちの努力の結果、すでに安くて良いものが十分に揃っているのが現代です。そんな中でお客様は、「もっと便利なもの・もっと自分に合うもの・自分の心を満たすもの」を求めています。

 

零細企業であれ、上場企業であれ、会社は、顧客側の期待の変化に合わせて、どんどん変わっていく必要があります。

 

もしこのA社さんが変革を先延ばしにして変われないでいるとしたら、、、

 

今でさえ「もはやスーパーに買い物に行く必要性さえなくなってきている」、その10年後はどうなってしまうのか、かなり心配になってきます。

あなたの会社は...

さて。

 

あなたの会社で、誰もが良い案だと思っているのに「でも、それはうちの会社では無理」と言っていることはありませんか?

 

それは、この先10年を見越した戦略を熟考し、取捨選択した結論なのでしょうか?

 

もしかして、判断を先延ばしし、今のままでもなんとかいけるんじゃないかという安易な結論なのではありませんか?

 

ぜひ、「できない」という根拠を自分自身に問うてみてください。

「できない」の先にある、10年後も想像してみてください。

 

世の中で勝っている人は、問題の解決を「先延ばし」にはしなかった人達です。


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