Vol.16 客数を増やす3種の神器-”価格”はこんなに重要

ある美容室で、新業態の事業計画が進んでいます。半径500メートル圏内に100を超える競合店があるという激戦区で勝負をしている店舗です。

ある美容室のチャレンジ

経営者のM社長は、今後10年、20年、従業員が生き生きと働ける会社であり続けるために、抜本的にメニュー構成を変えたいと、数か月前に当社にご相談に来られました。

 

諸々のリサーチやディスカッションを経て、今後、店舗の空いたスペースを使って、従来のカット・パーマ・カラーではない「当社にとって全く新しいサービス」を提供することに。

 

これはお客様のロイヤルティ(お店への忠誠度)と客数・客単価を上げるいくつかの作戦のうちのひとつです。そのサービスを提供するために「外部のプロ」との提携も進んでいます。

 

その中で先日、検討テーマになったのが、「価格設定」。

 

M社長としては、価格設定はその「外部のプロ」に決めてもらおうと思っている、とのこと。「いや、実は価格をいくらにしたらいいか、よく分からないんですよ」というのが理由です。

 

ハイ。ええ、お気持ちは分かります。

 

「当社にとって全く新しいサービス」なので、社内の誰にとっても専門外。自分が値付けするよりも、プロに任せてしまった方が、お客様には良いような気がするんですよね...でも...

商品・メニュー構成と同じくらい価格帯も重要

前回のコラムで、「商品構成は自社で決めるべき」と書いたのですが、同じく価格帯も自社で決めるべきなのです。なぜなら、

 

①ターゲット顧客  ②商品構成・サービスメニュー  ③価格帯

 

この3つは、3点セット。本来、分かつことはできないものだから。

 

ある店が「誰か」に「何か」を売るとき、その「誰か」は、「●●なら、●●円くらいで買ってもいいかな」という「予算感」を持っています。

 

だから、戦略としては

 「お客様はいくらなら買ってくれるのか?」

 「お客様はこのサービス・この商品にいくらの価値を感じるのか?」

...という「狙いどころ」が必ず必要になるのです。

 

その「予算感」を捉えた上で価格帯を決めることは、とても重要です。その「当社にとって全く新しいサービス」の作業自体は人に任せてもよいですが、価格帯を決めることは、人に任せてはいけません。

価格と客数の関係

①ターゲット顧客  ②商品構成・サービスメニュー  ③価格帯

 

が3点セットだと言いましたが、この3つこそ、客数を決める「3種の神器」だと言って過言ではありません。この神器が素晴らしければ、実際、接客や広告宣伝はほぼ不要になるケースもあります。

 

価格についていえば、当然ながら、こちらが提供する価格帯が相場よりも高ければ高いほど、客数が少なくなります。逆に、価格帯が相場よりも安ければ安いほど、客数は多くなります。

 

そして基本戦略としては、できるだけ多くの人の予算感が許す価格、つまり、多くの人が「それなら買いたい!」と思う価格で売りたい。

 

なぜなら、それが一番ラクに客数を増やせる方法だからです。(これで失敗すると、あとで集客に苦労することになります。)

 

どうしても相場やお客様の予算感より高くなってしまうのなら、その「差分」にどんな価値があるのかを、もう必死になってアピールする必要があります。(これには色々な販売技術が必要です=人件費・広告宣伝費がかかります)

 

いずれにせよ、あるターゲット顧客層を決めたら、その人たちの予算感、お金の使い方、競合の価格帯などを徹底的に調べた上で、「いくらだったらうちの店を使いたいと思うか」を徹底的に考えることは、欠かせない作業なのですね。

iモードがヒットした理由

価格設定を支援するときに、いつも思い出すのがNTTドコモの「iモード」。

今でこそ、スマホでネットの情報を見る、というのは普通のことになりましたが、ケータイでコンテンツを見る、その始まりは「iモード」でした。iモードというのは、実は、現在のLINEにもつながる、日本のモバイルコンテンツ文化の源流となった、素晴らしく画期的なサービスでした。

 

日本で爆発的に普及した理由のひとつは価格設定です。それまで従量課金(使えば使っただけお金がかかる)が一般的だった通信料の世界に、「情報見放題、読み放題、使い放題で月300円」という価格が設定されたのです。

 

この通信料は、「iモード」事業の立ち上げを行った大手コンサルタント会社のチームが、もともとは1000円以上の値付けをドコモに提案した、という裏話があります。この提案に対して、元リクルート編集長(ドコモ側の主要メンバー)が、「このサービスの本質は雑誌を買って楽しむのと同じだ。だから、300円程度の価値が適当だ」と主張して最終的な価格が決められた、という逸話があるのです。

 

これが、当初の想定の通り1000円以上の値付けだったとしたら、日本でiモードが普及することもなく、絵文字文化が生まれることもなく、LINEが生まれることはなかったと言っても過言ではないでしょう。

 

これは、ほんの一例です。

 

古今東西、ヒットした商品やサービス、業態が話題になる時は、その「機能面」の素晴らしさが取り上げられることがほとんどです。でも実際には、その素晴らしい商品・サービスが「より多くの人が喜んで買う価格で提供されてきた」という価格の側面を見逃してはいけません。

今後10年成長するカギは...

冒頭のM社長。本来、お客様を喜ばせることが大好きな方です。

 

価格の重要性、何をどこまで経営者が決めるべきなのかご理解いただいたあとは、新業態としてお客様に新しい価値を「喜んで買える価格」で提供して、今まで以上に喜んでいただくことに希望を持たれたようでした。

 

...さて。

 

皆さんは、お客様の予算感を理解していますか?

 

お客様が、どんなお金の使い方をしているか、把握できていますか?

 

そして、みなさんのお店の商品・サービスの価格は、「より多くの人が喜んで買う価格」で提供されているでしょうか?

 

今後10年成長するカギのひとつは、そこにあるかもしれません。


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