Vol.34 中小企業の店舗が改装で売上増を目指してはいけない理由

「改装しようとしている」「改装で失敗した」というご相談

先週、立て続けに2件、店舗改装についてのご相談がありましたので、今日は改装についてのお話をしましょう。

 

ご相談のひとつは「モトさん、店を改装しようと思っているんですが、図面をちょっと見ていただけますか?売上あがると思います?」というもの。

 

「うーん、おしゃれにはなりそうですけど、お客さんの回遊が悪くなるし、陳列量が減りそうですね。売上は落ちると思いますよ。」というようなやり取りでした。

 

もうひとつは、別企業の専務の話で、13店舗ある店のうちの1店舗について。

 

「モトさん。この店は3年前に赤字だったんですけど、その後、社長がインバウンド需要に対応するために、和風モダンな内装に改装するといって改装して、、、結局外国人のお客さんなんか来なくて、だからまだ赤字が続いているんです..」というご相談。

 

それぞれ業種も業態も規模も異なりますが、中小企業の店舗ではよくあるケースですね。

 

先に結論を申し上げると、「中小企業の店舗が改装で起死回生を目指してはいけない」

 

なぜか? 

 

「改装による起死回生(=改装によって売上増を狙うこと)」は「ほぼギャンブル」だから。

 

どういうこと?

改装したら、いくらの売上が必要か?

まず、改装はお金がかりますね。

 

内装をやり替えて100万。什器や設備も入れ替えて300万。外観もいい感じに変えて500万とか。

 

ここで、計算が苦手な経営者は、「そうか、改装に100万かかるのか..」と財布を開きながら、でも、「100万円以上売上が上がればいいか!」と、なんとなく考えてしまう。つまり、売上で投資のモトを取ろうと考えます。

 

これが間違いです。しかも、致命的な間違い。

 

投資の回収は、「増えた分の売上」ではなく、「増えた利益」で行います。

 

なので、「100万の改装の投資」は、「100万の売上」で回収するのではなく、「100万の利益」で回収する。 

 

じゃあ、「100万の利益」を出すためには、いくらの売上が必要か? 

 

答えを先に言うと、ざっくり1400万円、売上を「増やす」必要があります。(※1)

 

え?なんでそうなるの?

 

売上100万円に対する利益は5万~7万くらい

売上が100万増えたとしたら、いくらの利益が残るでしょう?

 

売上100万円から、仕入原価を引きますね。仕入原価70%だとしたら、残りは30%。30万です。(サービス業の場合は、仕入原価を人件費に置き換えて考えます。)

 

ここから、改装に伴って発生した広告宣伝費とかが差し引かれる。(改装キャンペーン、とかをやりますよね?)

 

もろもろの諸経費が20万だったとして、残り10万円。ここから税金が30%差し引かれるとして、残り7万円。

 

最後に残るのは、売上100万円に対して7万とか5万くらいのものです。

 

この7万とか5万を、地道に100万円分積み上げる必要がある。そして、必要となる「増分」売上が概算で1400万円。ここが本当のゴール。これが本当の「回収」です。

  

思ったよりもずっと多くの売上が必要です。

 

3年でモトを取るとして、1か月でだいたい40万円、今よりも売上が増えないといけない。(※2)

 

さらにこわいのは借入です。自己資金ではなく、借入でこういう改装を行ってしまうと、「モトを取れない」どころか、「返済ができない」という状況に陥って、資金繰りが悪化し、会社が立ち行かなくなってしまいます。

 

(※1)売上100万円:利益7万円=売上x万円:利益100万円  x=1428万円

(※2)1428万円÷36か月=39.7万円

改装で売上が上がるのか?

いやモトさん、改装すれば売上が上がる、、、ような気がする、、、

 

、、、と、こっそり思っている方がいらっしゃるかもしれませんね。

 

若いお客さんが好きそうな内装にすれば、若い人が来るかも...

外国人が好きなそうな内装にすれば、外国人が来るかも...

おしゃれな内装にすれば、話題になって、離脱したお客さんが戻ってくるかも..

 

..というように。

 

この「かも..」が実現する確率が高いか低いかは、自分の経験を振り返ってみれば分かります。

 

あなたの行きつけの店で、内装が素敵になったからという理由で、モノを余計に買ったりしますか?

 

あるいは

 

最近ご無沙汰している飲食店で、内装が変わったらしいという理由で、頻繁に足を運ぶようになりますか?

 

答えは「NO」のはず。

 

そう、お客さまは、内装がいいからという理由で、モノを買ったり、来店頻度を上げたりはしないのですよ。

 

100万の改装の投資をした時には、売上が1400万円上がるどころか、売上が100万円上がるかどうかも見えない、というのが実際です。

 

改装によって売上を伸ばそうをする策はギャンブルに近いものがあります。

「知らなかった」では済まされないほどのダメージを、中小企業の店舗に与えるのです。

売上増加は、商品構成・サービスメニューの刷新から

じゃあ、モトさん、売上を上げるにはどうしたらいいんですか!

 

と言われそうですが、、、

 

私の答えはいつも、商品構成・サービスメニューの刷新です。

同時に、ターゲット顧客と価格構成の見直しです。

 

内装を斬新できれいにするような改装では、まず売上は増えない。なぜか?お客様は、内装ではなく、商品構成やサービス構成そのものを見て判断するものだから。

 

そもそも、「売上」というものは、何でできているのか?それは、おおむね次の4つです。

 

 ①ターット客層 

 ②商品/サービス構成(価格帯)

 ③場所(立地・拠点)

 ④売り方

 

内装や外観や什器などは「④売り方」の範疇です。①②ができていない状況、つまり、儲からない相手に儲からない商品・サービスを売ろうとしている状況で「売り方」を強化しても、売上はなかなか上がらない。

 

「④場所」を変えることは、とても有効です。競合がいなくて、安い家賃、人を雇いやすい場所に移転すればよい。ですがこれには、相当なお金と決断が必要ですね。

 

だから、①②、つまり、ターゲット客層、商品/サービスの構成、価格帯を見直して、より売上や利益が出せるように作戦を立て直すのです。

まずは、商品構成・サービスメニューの刷新から

冒頭の「インバウンド対応」の内装で失敗した会社も、まず「インバウンド対応」「外国人観光客向け」のサービスメニューを作ってみればよかったはず。

 

「和風の雰囲気」は、とりあえず、掛け軸や和風の照明器具や小物など、簡単で安く調達できるもので作っておいて、まずは、外国人が喜ぶようなサービスを作りこみ、価格をつけて、メニュー化してみる、ということを先にすればよかったのです。

 

そして、販路をさぐり、30人なり50人なりの外国人のお客様に対応してみて、「これはいける!」と手ごたえを得てから、改装なり広告なりに投資をしていけばよかったと、私は考えます。

 

さて。

 

皆さんの会社は大丈夫でしょうか?

売上が立つ見込みのない投資を考えたりしていませんか?

 

投資に臨む前の、地道な、でもより確実な利益が見込めるプロセス、つまり、商品構成やサービスメニューの見直しという重要プロセスを、見落としてはいませんか?


●コラムの更新をお知らせします(毎週木曜日)

本 由美子 もと ゆみこ

㈱Sente 代表取締役

代表コンサルタント

 



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