第66話 モノづくり会社が「個人向け販売」を成功させるための条件

個人向け直販を始めよう、と意気込んでみたものの...

 モノを作る会社(製造業、メーカー、印刷業など)が、BtoCに活路を求めようとするケースが増えています。今までBtoBメインに事業をしてきた、しかし、新たな成長分野にチャレンジするために消費者向けに直接販売しよう、という戦略です。製造業の不振、人口の減少、安価な初期投資で開設できるECサイトの発展、従来型小売業の低迷などが、明かにこの動向を後押ししています。
 しかし、「モノを作ること」に力点に置く会社がBtoCのビジネスを始めると、多くのケースで失敗に終わります。
 
 小売製造業(洋菓子店、和菓子店、飲食店等)という業態がありますが、こちらも、「販売」と「製造」という機能のうち、「製造」側に軸足がある経営の場合には、その事業は赤字や低成長で終わることが多いのです。
 「〇〇職人」という響きは良いのですが、製造業では販売が不得手な経営者が多いのが実際です。この場合、競合の台頭、市場の変化、時代の流れの中で生き残る強さは持ちません。
製造業でありながら小売事業を成功させるためには、いくつかの条件があるのです。

まずは、相当数の潜在顧客が必要

 いくら「個人向けの販売」に成長の可能性があるといっても、BtoCビジネスで得られる「顧客別の売上・利益」は、BtoBビジネスの「顧客別の売上・利益」と比べれば、たかがしれています。BtoBの経験を持つメーカーなら、経営幹部や社員にとっては、小売商売など小遣い稼ぎにしか見えないでしょう。
 しかし、事業に原価・人件費・広告宣伝費・開発費などのお金がかかっている以上、モトは取らなければなりません。小売事業を黒字事業として成り立たせるためには、経費を上回る粗利をはじき出さねばなりません。
ですので、小売事業を成功させるためには、基本として以下の条件をクリアすることが必要です。
 ①相当数の潜在顧客と購入客
 ②できるだけ高い客単価を実現すること
 ③できるだけ高い粗利
 ④できるだけ少ない経費(人件費、家賃、広告宣伝費等)
メーカーの小売業進出は「③できるだけ高い粗利」以外の全てが不得手であることが原因です。 

メーカーならではの価値観が成長を阻む

 製造を軸にする会社は、当然ですが、「モノを作ること」を重視した価値観を持ちます。
 メーカーが必然的に重視するのは、品質(衛生管理、味、強度、デザイン等)重視の価値観ともいえます。一定の品質基準を満たした製品を生み出し続けるためには、材料の調達、工程管理、品質管理、それこそ全身全霊で実現するような相当な配慮・工夫・チャレンジが必要ですから当然です。しかし、この価値観こそが、小売事業においては失敗を招きます。
 まず、「①相当数の潜在顧客と購入客」について。
 一見「小遣い稼ぎ」に見える事業を、本当に収益性の高いものにするためには、1日何百、何千、何万、という規模の顧客に販売する必要があります。そのためにh、本来は、潜在顧客の規模やニーズを調査したり計算したうえで、そのニーズに合う商品を提案していくべきなのです。
 これまでBtoBのビジネスをしてきた会社なら、数社、または数十社という限られた顧客から、直接的に、具体的なニーズや仕様を聞きながら、モノを作ってきたはずです。ですので、何百、何千、何万という顔の見えない消費者のニーズをくみ取って、彼らが買いたいと思うような商品を提案することが苦手です。
 さらに、メーカーの場合、関心が「自社の製品の良さ」や「クオリティの高さ」に向くがゆえに、市場規模や顧客のニーズと関係なく「うちの商品はこれです、素晴らしいものです、いかがですか?」とモノを売り込む形になってしまいます。ここが、売り手と買い手の「最大のミスマッチ」です。
 ひどい場合は、自社の製品に自信と愛着がありすぎて、「この製品の良さを理解しない顧客には、モノを見る目がない。売れないのはお客側のせいだ」と、「買わない顧客」を陰で貶める経営者も実際にいらっしゃいます。お気持ちは理解しますが、売上を立てるためには、「顧客に喜んでもらえること」が絶対条件なのです。顧客を責めては本末転倒です。
 次に、「②できるだけ高い客単価を実現すること」について。
 メーカーの直営の場合、「クオリティが高いものだから、高く売りたい(野望)」「良いものだから、高く売れるだろう(希望的観測)」という楽観的な見方が多く見られます。しかし、皆さんご自身がそうであるように、人は予算が限られた財布を持って買い物をします。クオリティが高いからといって、ホイホイ高い値段を払って買う人など、ほとんどいないと考えてよいでしょう。高い価格の商品は、単に客数を減らします。
 逆に「製造直販」をウリにして、ひたすら大量に安く売る、という単純な手法も、メーカー直販には横行します。この手法では、当然ですが、粗利は低くなり、顧客にとってのその商品の価値は「安いもの」でしかなくなります。本当はもっと価値があるのに、残念なことです。
 そして、「④できるだけ少ない経費(人件費、家賃、広告宣伝費等)」。
 上記の失策を挽回するがごとく、やたら立地の良い、やたら内装に手のかかった店舗、必要以上に高額の(しかし効果の出ない)広告宣伝費をかけてしまうのが、メーカーの小売事業の特徴です。結果、儲からない事業になりがちなのです。

言い訳なしでチャレンジすべき

 赤字の小売事業部門を放置する経営者によくある言い訳は「(この店は)アンテナショップ的位置づけなんです」「(この店は)地域のお客様への貢献事業なんです」というものです。しかし、その言い訳を続けている限り、その事業は御社の未来を担う柱にはなりません。むしろ、赤字事業を続ければ続けるほど、未来への投資するためのキャッシュは減り続けます。
 ちなみに、多くの自治体が都心の一等地に「アンテナショップ」を持っていますが、この業態は上記①~④の全てに反していますから、企業基準でいえば赤字(もしくは大赤字)でしょう。まさに、血税あっての業態です。
 また、「地域のお客様への貢献事業」は、赤字大放出、出血大サービスによって実現されるものではなく、本来、多くのお客様に喜ばれ、十分な売上と利益を出し、雇用を生み出し、税金を支払うことによって実現されるべきものです。
 クオリティの高いモノを作り続けるために多くの工程や基準があるように、利益を出しながら消費者にモノを売るためにも、多くの工程や基準があります。お客様の喜びを間近に感じられるのが、小売事業の一番の魅力です。御社の商品が一人でも多くのお客様を喜ばせることができるよう、ぜひ果敢にチャレンジを続けてください。
 皆さんのお客様は、どのようなニーズを持っているでしょうか。その方々を、御社は、そして御社の商品は、どのように喜ばせることができるのでしょうか?

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