第69話 中小企業経営者が知るべき、リスクテイクの「さじ加減」

自然災害リスクよりも、怖いもの

 この夏は、大きな自然災害が相次いでいます。報道では個人の被害が取り上げられがちですが、被災地の中小企業でも大きな被害が発生しました。
 
〇工場が浸水して製造ができなくなった
〇倉庫の在庫が水浸しになって売れなくなった
〇店自体が全壊/半壊した、、、等
 これはこれで大変なことなのですが、ほとんどの企業にとってもっと身近で、優先的に対策を打つべきリスクがあります。それは「事業が儲からないかもしれない」リスク、「赤字リスク」です。あらゆる経営者が直面するリスクですので、その対応の仕方には、経営者ごとの腕の違いが明かに現れます。 
 一般には「リスクを取ってこそリターンが得られる」と言われますが、この「リスクの取り方」を間違うと命とりになります。特に、「赤字リスク」には注意が必要なのです。

無防備な先行投資から利益を得る確率は50%以下

  よくある「リスクテイク」は、先行投資、と呼ばれるものです。新しく出店する、新しく工場を建設する、新しくシステムを導入する...こういったプロジェクトに多くの経営者が、一世一代の勝負とばかりに、銀行から借入をしてまでチャレンジします。

 

 その経営者にとっては「生産性を上げるための先行投資」「売上を上げるための先行投資」「将来の柱を作るための先行投資」なのです。

 

 しかし、この「先行投資」、会社を致命的な状況に陥れる可能性が最も高いものでもあります。

 

 なぜなら、ここで思い切った「先行投資」をしたとしても、その投資によって利益が得られる可能性は極めて不安定だから。特に新規事業であれば、赤字で終わる可能性は50%以上、つまり、利益を得られる可能性は50%以下と考えてよいでしょう。

 例えば、利益の源泉である「売上」は、顧客が自社の商品を気に入って買ってくれるどうかという、顧客の気分、ニーズによって決まります。顧客に響く営業ができない可能性、広告宣伝が不十分な可能性もあります。
 そもそも、自社が売ろうとしている商品・商品構成を気に入る顧客が商圏内(自分たちが手の届く範囲)にほぼいない可能性もあります。これは、そもそもの事業戦略の失敗です。
将来のためにリスクを取り、「思い切った先行投資」をしたにもかかわらず、経営者は、思ったほど売上が伸びない、思った以上に経費がかかる、投資を回収する見込みが立たない、返済できる見通しが立たない、という事業リスクに頭を抱えることになります。
 リスクは「会社の資金を減らす落とし穴」ですが、赤字になる「事業リスク」の存在感は、自然災害の比ではありません。問題は、先行投資をしようとするこの経営者に、そのリスクが見えているかどうかです。

ビジネスの強者は「無駄死に」を許さない

 これは、将棋に例えると分かりやすいでしょう。

 子どもは、飛車・角などの大ゴマを使って、勢いよく敵陣に乗り込み相手の駒を取る戦術を大いに楽しみます。しかし、自分より強い相手に攻め込まれると、守りが弱いためにすぐに負けてしまいます。
 これは、まさにリスクが見えていないことによる敗北です。子どもが将棋で強くなっていくために必要なのは、リスクを知って、危険が見えるようになり、その対策として守りを固めていくことです。
 一方で、強い指し手は、盤上の敵陣の駒と相手の持ち駒を見て、いま、自分の陣営のどこが弱く、どこが相手に攻め込まれやすいかをよく理解しています。そして、その弱いところを守りながら、勝負を展開します。
 
 強い人ほど、敵陣を攻めるときに、決して無防備な攻め方をしません。攻める駒に2重、3重の護衛をつけ、死なないように、少なくとも「無駄死に」は避けるように動きます。(攻撃の駒が死んだら、護衛の駒が相手の駒を取り返します。)

  

 世界中、あらゆる経営者が失敗しています。それこそ、名経営者とよばれる過去のレジェンドたちもそれぞれに、始めた新規事業が失敗に終わるという経験を抱えています。(ソニーの盛田さんも、京セラの稲盛さんも、ユニクロの柳井さんも、ソフトバンクの孫さんも。)しかし、その失敗によって決定的な経済的ダメージを受けなかったから、その失敗を生かして大きくなってきているわけです。
 私たちは事業を行う時、「自分たち自身ではコントロールできない」もののなかで、売上を立て、利益を出し、資金を増やしていく、という挑戦をしています。先輩たちを見れば分かる通り、失敗は避けられません。
 しかし、多くの経営者がリスクを取ろうとするときに、この点を軽視しています。自分は大丈夫だ、と過信するのです。そして、会社が立ち行かなくなるほどの損失と資金繰りの悪化を経て、つぶれていきます。
 事業には赤字という失敗がつきものです。だからこそ、失敗から即座に再び立ち上がり、新たな挑戦をするため の資金、やり直すための資金が必要です。融資を受け直す余力が必要なのです。失敗は最小限に抑える必要があります。
 
 成功していくのは、失敗を小さく抑える思考、情報力、そして、失敗してもすぐに立ち上がれる気力と体力とお金です。
 
 どんなリスクがありうるのか徹底的に調べ尽くす。そのリスクに対して対策を打ち尽くす。事業が失敗した時に自分が「勉強代」として許容する資金の喪失はどれくらいなのかを見積もる。失敗だと思ったら、早々に損切りする。こういったことができて、はじめて、社長は安定的なチャレンジができ、会社を伸ばしていくことができるのです。

落とし穴はどこにあるか?

 失敗するなど考えない、勝つ気で闘わなければ勝てない、というのは精神論、感覚的な判断です。素晴らしい心構えですし、従業員の前では心強い言葉を放って鼓舞することも重要でしょう。

 

 しかし、思考は極めて慎重に。見通しの予測は冷静に、多角的に。可能な限り、論理的に、科学的に、数字的に行うべきです。

 

 優れた経営者は、リスクをよく分かっているからこそ、守りに強い。世の中に、営業や販売や広告宣伝など「攻め」に関する情報は多く出回っていますが、守りを固める、という一見地味な戦略に関する情報は不思議なほど見かけません。
 一段高い位置から事業を見て、自分の盤を見渡して、いちはやく落とし穴を発見し、商品構成や、ターゲットとする客層や、販売の方法、資金調達の方法等、あらゆることに対策を打ってこそ、事業が発展するのです。
さて。
みなさんの事業に潜むリスクは何でしょうか?
そのリスクを乗り越えて、できるだけ安全に、高みをめざす準備はできていますか?

●中小経営者限定実務セミナー開催中!

 

 今あるサービス・商品中心に【売上・利益の最大化】を実現する、BTM式商品構成・サービスメニュー刷新法。

 経営者は【現状打破】のためにどう判断し、どう行動していけばいいかを分かりやすく解説する実務セミナー。

 

「当社の転換のきっかけになりました!」と評価いただいています。詳しくはこちら→

●コラムの更新をお知らせします

中小企業経営者応援✉
今回のコラムはいかがでしたか?下のフォームでご登録いただくと、コラム更新をお知らせします(いつでも解除できます)。筆者による【メルマガ限定の特別メッセージ】もお送りします。ぜひご登録ください。
Eメール *
* 必須項目